2005年12月23日

第32話 ストーブの前で動かない


ストーブの前で動かない



寒い日が続いている。

まだ12月なのに北陸では大雪が降っているし関東地方も例年になく朝晩の冷え込みが厳しい。
ポーが普段いる部屋も寒い。ここは僕の書斎なのだけど僕がたまにタバコを吸う時にヒーターをつける以外は火の気がないのだ。ポーも暖かいア居間に下りてくることもあるのだが、2歳の次男が追い掛け回すので嫌がってこの部屋に避難していることが多い。
この部屋の自分のベットでお古のセーターに包まって寝ている方が落ち着くようだ。

猫は寒いのが苦手だ。必ず少しでも暖かいところを見つけて日向ぼっこをしていたり暖を取っている。
ポーの部屋でファンヒータをつけるとすかさずに近寄ってくる。それまでどこかに隠れていたとしても必ずヒーターの前にあらわれるのだ。弱にするとぴったりとファイヒーターに寄り添ってうずくまって、火がつくんじゃないかと心配してしまうくらい、寒がりだ。

そんなポーを見ていると昔のことを思い出した。僕が一人暮らしをしていた頃、アパートには僕が帰るまでまったく火の気がなく真冬は冷蔵庫のように寒かった。

僕の足音を聞きつけたポーが玄関で出迎えてくれるのが習慣になっていたのだけど、真冬はポーは出迎えてはくれなかった。たいがい僕のベットの布団の中で丸くなって寝ているのだ。
寒いアパートの中でその布団の中だけがポーの体温で暖かかった。手を入れるとぬくぬくと寝ているポーの暖かさが、かじかんだ手に心地よかった。
寒い誰もいない部屋で一人でずっと僕を待っていたのかと思うと、可愛そうないじらしい気持ちになった。だけど半面、寒い中を凍えながら帰ってきた僕に引換え、この暖かい布団でずっと寝ていたことを考えると妬ましくも思えた。

「ポー、帰ったぞー」

布団を剥ぎ取ると、丸まったポーが「寒いじゃないかー、このやろうー」というように「にゅぁあー」と鳴いた。

冬になるとこれが毎年くり返された。隣の部屋でストーブをつけても部屋が暖まらないうちにはベットから出てこなかった。しばらくして部屋が温まった頃にやっと起きてきて僕にエサの催促をするのがいつもの日課だった。

もう10年以上も前のことなのだな。

ファンヒーターの前で番人のように座っているポーの背中をなでながら、そんなことを思い出していると、その気持ちを分かっているかのように、ポーが僕の顔を見上げて、小さく「にゃぁ」と鳴いた。



posted by ころすけポー at 18:52| Comment(3) | TrackBack(0) | 猫の思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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